【書籍紹介】エルメス「エルメス(戸矢 理衣奈著)」

エルメス(書籍)

本記事では、エルメスに関連した書籍として「エルメス」戸矢理衣奈著(新潮新書)を紹介させて頂きます。

エルメスの経営史やブランド力の背景、そして、日本とエルメスの関わり合いなどを知りたい方にはお薦めの一冊です。

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1.著者「戸矢 理衣奈」氏

著者の戸矢理衣奈氏は、2022年12月現在、東京大学生産技術研究所で准教授をされている方です。

「人文知の工学への展開」といった領域を専門としているようです。

具体的には、美意識をめぐる社会史・文化史や、ファッションや化粧品業界の経営史について研究を行っており、文化や芸術の社会や工学への展開に取り組んでいる方です。

なお、戸矢理衣奈氏は本書「エルメス」以外にも、「下着の誕生 ヴィクトリア朝の社会史」や「銀座と資生堂 日本を「モダーン」にした会社」などの著作があります。

2.刊行は2004年

本書は2004年に刊行されたものですの。

そのため、現在の状況とは若干異なる点もあります。

ただ、本書のメインの記載はエルメスの創業以来からの歴史や、そのブランド力の背景ですので、今読んでも十分価値のあるものとなっています。

また、2004年当時のエルメスを取り巻く様子も知ることが出来て面白い点もあります。

3.ブランド公式の書籍ではなく、あくまで外部からエルメスを分析した書籍

本書は題名こそ「エルメス」となっていますが、エルメス公式の書籍というわけではありません。

筆者もエルメス・ジャポンやフランス本社に取材を依頼したようですが受け付けてもらえず、外部で入手することが出来る資料等から分析を行なっています。

そのような背景から、本書は、エルメスという会社が実際に自社のブランドや経営についてどのように考えているかといった視点から述べたものではありません。

あくまで客観的・多面的に外部からエルメスのブランド力の背景や企業活動を分析した本となっています。

4.真面目なブランド分析の本

上記の通り、本書はエルメスのブランド力の背景や企業活動を分析したものですので、いわゆるファッション雑誌のようなエルメスのバッグや革製品の写真や紹介はありません。

そのため、「エルメスの製品をたくさん見たい」「エルメスのバッグの詳細を知りたい」という方にはあまり向いていません。

エルメスの経営やブランドビジネスの背景を知りたいといった方向けの書籍と言えます。

5.キーワードは「伝統」と「革新」

本書におけるキーワードは、「伝統」と「革新」です。

具体的には、著者は、エルメスを始めとした老舗プレミアム・ブランドに共通している成功要因として「伝統」と「革新」を挙げ、そしてブランドアイデンティティを構成する要素として「品質」「イメージ」「希少性」という3つの側面を指摘しています。

6.経営史・デザイン・広報

この「伝統」と「革新」というか観点から、本書ではエルメスの(1)経営史、(2)デザイン、(3)広報が語られています。

(1)経営史

馬具製造から始まった創業から2000年代に至るエルメスの歴史が紹介されています。

かなり詳細にエルメスの経営史が語られていますので、馬具工房から始まったエルメスが、いかに現在のようなバッグや革製品を主体として幅広いジャンルの製品を展開するエルメスとなったかが分かります。

(2)デザイン

著者は、エルメスの魅力の一つとしてデザインの統一性を挙げています。

具体的には、エルメスの製品には、ロゴが無くてもエルメスのものだと感じさせる雰囲気があると指摘しています。

確かにエルメスの製品は、大きなブランドロゴが入っているものは多くはなく、ケリーやバーキンといったバッグは、ロゴではなく、その製品のデザインだけでエルメスの製品と分かるまで浸透しています。

また、面白い視点として、「見えないデザインとしてのネーミング」という点でもエルメスの特徴を指摘しています。

(3)広報

エルメスはその広報活動においても、ブランドイメージの統一感にこだわっています。

近年は、他のプレミアム・ブランドでも盛んに行われているメセナ活動(文化支援活動)ですが、エルメスも積極的かつ効果的に行なっていることが示されています。

また、エルメスのユニークな「年間テーマ」の設定や、広報誌「エルメスの世界」についてもかなり詳細に説明がなされています。

7.日本とエルメス

また、本書では、日本とエルメスの関わり合いについてもいくつかの視点で解説されています。

(1)エルメスの日本での定着

エルメスがどのように日本に登場し、その後定着していったのかが分かります。

日本登場の直後は、エルメスの販売はあまり振るわなかったようです。

その後、現在までの発展に至るまでには、そこにはやはり「品質」「イメージ」「希少性」が重要な役割を果てしていました。

(2)文化やデザインの関わり合い

エルメスがいかに日本の文化やデザインを上手く取り入れているかについても解説されています。

「エルメスと言えばフランスのブランド」といったイメージが当然ありますが、そのようなブランドが日本と深く関わり合いを持っていることも知ることができます。

(3)なぜ日本でエルメスが受け入れられたのか

また、エルメスがなぜ日本でこれほど人気なのかについても筆者の見解が述べられています。

本書は、筆者が30代の際に執筆されたものであるため、まさに筆者自身もエルメスの消費者層であり、そのような視点からの見解も加わった考察となっています。

8.エルメスのブランド力や人気の秘密を客観的に分析した本

上記の通り、本書はエルメスの製品の紹介をメインとした書籍ではありません。

また、エルメスが会社として関与した書籍でもありません。

どちらかと言えば経営学的な視点からエルメスを分析した書籍であり、そのような観点から「なぜエルメスがこれほど人気なのか」を知りたい方にお薦めの書籍です。

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