本記事では、エルメス関連の書籍として「エスプリ思考 エルメス本社副社長、齋藤峰明が語る」を紹介します。
エルメス本社の副社長まで務めた方が語るエルメスの本質や仕事への取り組みは、エルメスに興味がある方はもちろん、一般的な仕事への取り組み方の参考にもなり、とても面白い内容となっています。
1.著者「川島蓉子」氏
本書は、ファッションやブランド関連の書籍を多く書かれている川島蓉子氏が、エルメス本社の元副社長である齋藤峰明氏に行なったインタビューがベースとなっています。
筆者である川島蓉子さんは、ファッションやブランド関連の書籍を多く書かれている方で、主な著書には以下のようなものがあります。
・「資生堂ブランド」(株式会社アスペクト)
・「ビームス戦略」(日経ビジネス人文庫)
・「伊勢丹・ストーリー戦略」(株式会社PHP研究所)
・「TSUTAYAの謎」(日経BP社)
このようにファッション関連の多くの著書を出されている方なので、本書の内容もファッションやブランドにおけるエルメスの特異性をよく捉えていると思います。
2.エルメス本社副社長「齋藤峰明」氏
本書の主役である齋藤峰明氏は、エルメス・ジャポンの社長を務めた上で、エルメスの本社であるエルメス・インターナショナル社の副社長も務めた方です。
その経歴は大変ユニークですが、主な略歴をまとめると以下のようになっています。
・1971年、19歳で単身でパリに渡航。
・1973年、パリで大学に通いつつ、三越パリでアルバイトを始める。
・1980年、27歳でパリ三越に入社し、主任となる。
・1984年、32歳でパリ三越の駐在所長。
・1992年、40歳でエルメスに入社。エルメス・ジャポン社の営業本部長。
・1998年、46歳でエルメス・ジャポン社の社長に就任。
・2008年、56歳でエルメス・インターナショナル社の副社長に就任。
このように、高校卒業後に単身でパリに渡り、その後、パリの三越でのアルバイトから始まり、パリ三越の駐在所長を経て、40歳でエルメスに入社しています。
しかも、エルメスへの入社は、エルメス側から直接声がかかっての入社です。
本書を読むと、このような齋藤さんのキャリアがなぜエルメスで求められたのか、また、エルメスでこのようなキャリアをどのように活かしていたのかを知ることが出来ます。
3.齋藤氏が語るエルメスの理念・価値観
本書では、齋藤峰明氏の口から語られたエルメスの理念や価値観がメインとなっています。
エルメスの理念や価値観については、ネット記事や雑誌でも見かけることが出来ますが、やはりエルメス本社の副社長まで務めた方から語られる内容はリアリティがあり、ともて興味深く読むことが出来ます。
エルメスの理念や価値観を一言で語るのは難しいですが、個人的には以下のようなキーワードが核となっているように思えます。
・職人
・創造性
・使うことによる豊かさ
・信頼関係
いずれの点も本書では具体的な事例を踏まえながら紹介されています。
4.ユニークなエピソードの数々
また、本書では、齋藤峰明氏が実際に体験したユニークなエピソードが多く語られています。
(1)エルメス社の社長デュマ氏が齋藤に送ったポストカード
多くのエピソードの中で印象的だったものの一つに、齋藤氏が日本に赴任する際にエルメス社の5代目社長であったデュマ氏から送られた手書きのポストカードがあります。
本書では、その実際のポストカードが掲載されています。
そのポストカードにはデュマ氏の直筆メッセージとイラストが書かれおり、そのメッセージやイラストはとても温かみのあるもので、エルメスらしさが溢れています。
(2)なぜ、エルメスの旗艦店は表参道ではなく銀座なのか
また、本書では齋藤氏が関与したエルメスの旗艦店である銀座「メゾンエルメス」の立ち上げ背景についても詳細に述べられています。
2020年、エルメスの表参道店がオープンして世間を賑わせました。
しかし意外なことに、それまでエルメスは表参道に店舗は出していなかったのです。
多くのラグジュアリーブランドの旗艦店が表参道にある中、エルメスの旗艦店は銀座にある「メゾンエルメス」です。
なぜ、エルメスの旗艦店は表参道ではなく銀座にあるのか。
その背景にもエルメスの価値観やエルメスが大切にしていることが影響しており、本書を読めばそれがよく分かります。
また、銀座という街においては新参者であったエルメスが、銀座の街に溶け込んでいくための地道な取り組みも本書では紹介されています。
5.エルメスの価値観や、求められている人材を知りたい方にはお薦めの一冊
本書を読めば、齋藤峰明氏の半生を通じてエルメスの価値観や、エルメスがなぜ齋藤氏のような人材を求め、また、その齋藤氏が副社長までなることが出来たのかを知ることが出来ます。
そこからは、エルメスがどのような価値観を尊重し、どのような人材を求めているのかが分かります。
また、齋藤氏の仕事への取り組み方は、エルメスにおける働き方だけでなく、私たちの普段の仕事の中でも取り入れることができる点が多くあります。
そのため、本書は、エルメス自体に興味がある方だけでなく、エルメス社の副社長まで務めた方が仕事でどのような点を大切にしていたのかを知りたい方にもお薦めの一冊です。
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