本記事では、エルメス関連の書籍として「エルメスの道」を紹介します。
本書は、マンガでありながらエルメス監修の社史であるという非常にユニークな一冊です。
1.エルメス企画・発案の社史
本書は、中央公論新社から刊行されているコミックですが、マンガでありながらエルメスが企画・発案したエルメスの社史となっています。
本書の初版が発行されたのが1997年ですが、それまでそれまでエルメスには社史というものがありませんでした。
しかし、当時のエルメスの社長であったジャン・ルイ・デュマ氏が、日本の素晴らしい文化の一つであり、世界的に評価の高いマンガというメディアを用いて社史を作成することを発案し、本書が企画されます。
そして、その描き手の条件として「馬に乗れる人であること」と「馬が描ける人であること」というものがあり、乗馬が趣味でもあった漫画家の竹宮惠子氏に依頼があり、執筆に至っています。
2.初版は1997年刊行、新版が2021年に発売
本書の単行本初版は1997年に刊行されており、その後2021年に新版が刊行されています。
以下が、1997年に刊行された旧版です。
そして、本記事で紹介する新版は、1997年以降のトピックを新たに追加して2021年に発売されたものです。
3.エルメス創業から現在に至るまでの歴史がマンガで読める
本書は、エルメス企画・発案のもと出版されたもので、エルメスの創業から1990年代に至るまでの歴史をマンガで読むことが出来ます。
内容についてエルメスの監修を受けており確かなものであることはもちろん、マンガであるため非常に気軽に読めるという点も有り難いです。
なお、創業から1990年代までの歴史について、以下のエルメスの歴代社長に焦点を当ててストーリーは進んでいきます。
・創業者:ティエリ・エルメス
・2代目:シャルル・エミール・エルメス
・3代目:エミール・エルメス
・4代目:ロベール・デュマ・エルメス
・5代目:ジャン・ルイ・デュマ
今や世界的に有名なエルメスですが、創業から現在に至るまで多くの困難があり、それを当時の社長が知恵を絞って乗り越えてきたことを知ることが出来ます。
このようなエルメスの歴史は、企業の経営戦略としても学ぶことが多いと感じます。
4.著名なエピソードの数々
また、本書ではエルメスの歴史を通じて、多くの著名なエピソードを知ることが出来ます。
例えば、比較的有名なエピソードだけでも以下のような話があります。
・エルメスのロゴマーク(四輪馬車と従者)の意味
・エルメスのブランドカラーであるオレンジ色の由来
・エルメスがシャネルのスカートにファスナーを取り付けていたこと
・ウィンドウ・ディスプレーをエルメスが始めたこと
既にエルメス通の方であれば当然のように知っていることかと思われますが、エルメスに新たに興味を持ち始めた方にとっては、初めて知る面白いエピソードもあるかと思います。
5.新版では新たな章が3つ追加
さらに、2021年に発売された新版では、新たに以下の3つの章が加わっています。
(1)銀座メゾン
(2)ソー・エルメス
(3)petit h
この中では、特に銀座メゾンについては、多くの日本人にとっては身近なものとして興味深く読める章かと思います。
なお、銀座メゾンの章では、当時エルメス・ジャポンの営業本部長であった齋藤峰明さんも登場しています。
齋藤峰明さんについては、以下の書籍でインタビュー等を読むことが出来ます。
銀座メゾンを建築するに際しては、外壁のガラスブロックにこだわると共に、その調達に大変苦労したことが分かります。
この本を読んでから実際に銀座のエルメスに行くと、より一層感慨深い思いを味わえるかと思います。
6.エルメスの歴史を詳しく知りたい方に
本書の特徴の一つは、マンガであって読みやすいという点にあります。
しかし、本書のもう一つの特徴は、エルメスが企画・発案し、監修もしているだけあって、内容もしっかりしていることです。
マンガであるから内容は薄いということはなく、むしろ私達が簡単に手にすることが出来るエルメスの社史としては最も信頼のおけるものとなっています。
そのため、エルメスの創業から現在に至るまでの歴史を知り、エルメスへの理解を深めたい方にとっては、まず最初に読むべき一冊と言えます。
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