本記事では、エルメス関連の書籍として「老舗の流儀 虎屋とエルメス」を紹介します。
フランス企業であるエルメスと日本の和菓子屋である虎屋の経営陣の対談という非常にユニークな内容の一冊です。
1.エルメスのライバル企業は「虎屋」?
本書は、以下で紹介した書籍「エスプリ思考-エルメス本社副社長、齋藤峰明が語る(川島蓉子著)」において、齋藤峰明氏が「エルメスのライバル企業を強いて挙げるなら、日本の和菓子屋である『虎屋』」と述べたことから企画された対談となっています。
なぜエルメスのライバル企業が虎屋なのかについては、多くの方が疑問に思う点かと思います。
その理由については上記書籍または本書を読めば明らかになります。
2.「エルメスの副社長」と「虎屋の社長」の対談
本書は、エルメスの本社であるエルメス・インターナショナル社の副社長を務めた齋藤峰明氏と、老舗和菓子屋である虎屋の社長である黒川光博氏の対談をまとめたものです。
対談を進行し、本書をまとめたのは川島蓉子氏であり、川島蓉子氏は上記「エスプリ思考-エルメス本社副社長、齋藤峰明が語る」の執筆も行っており、その他にも多くのブランド関連の書籍を出している方です。
3.多岐にわたる話題について、二人の考え方を知ることができる
本書は、エルメスと虎屋のトップが単に両社の製品や企業活動をアピールするといった内容ではありません。
エルメスや虎屋のトップが、会社をマネジメントしていく中で大切にしてきたことや学び取ったことについて、多岐にわたって意見を交換するというスタイルで対談は進行していきます。
その話題は多岐に渡り、全ての話題を挙げることは出来ませんが、主な点だけでも以下のものがあります。
(1)会社とは何か
(2)働くとは何か
(3)リーダーシップとは
(4)フランスと日本の社会・文化の違い
(5)女性の働き方
(6)経営者としての1日
その他にも、若い世代への期待や、今後の日本に必要なことなどについても語っています。
4.互いに作る商品は異なっているが、多くの共通点がある両社
フランスの企業であるエルメスと、日本の企業である虎屋。
企業の国籍も異なりますが、扱っている商品も大きく異なります。
エルメスは革製品をメインに扱っており、虎屋は羊羹などの和菓子をメインに扱っています。
このように企業の国籍や扱っている商品が大きく異なるため、一見すると両社に共通点など無いように思えます。
しかし、この対談を通じて見えてくるものは、互いに似た考え方や価値観を持っているということです。
本書で取り挙げている多くの話題においては、当然、二人の意見が異なることもありますが、多くの点で根底には非常に似た考え方を持っていることが分かります。
少し例を挙げれば、少なくとも以下のような点で二人の意見は共通しています。
・伝統を守りながら新しいことに挑戦する
・職人の手仕事によるものづくりを大切にする
・顧客の期待や信頼に応える
そして、このような点こそが、取り扱う商品が異なってはいるものの、両社が長い間フランスや日本を代表する企業として存続して発展し続けている理由なのだと思います。
本書における対談は、ブランド論やマネジメント論を取り上げることを目的としたものではありませんが、結果として本書を通じてどのような業界にも通用し得る普遍的な企業のあり方が学べる一冊となっています。
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